チャットGPTを使ってみた

AIによる描画あるいはAIチャット(チャットGPTなど)が注目を集めている。両方とも無料で利用できる(有料版もある)。まだまだ、改良の余地はあると思われるが、インターネットの開発や産業革命に匹敵するものであると指摘する識者もいる。今後の進化を考えると末恐ろしいとも言え、今後各方面に大きな影響を与えるのは間違いない。

 

 AIとはつまり人工知能である。人工知能の元(知的資源)は過去のデータである。例えば、過去に発表された論文、新聞・雑誌記事、辞書・辞典・事典、テキスト、法律・判例、小説・詩など、Webページや掲示板に掲載されているさまざまな情報である。これら膨大なデータを読み込ませて基礎知識や専門知識を蓄積し、自身で学び、質問や課題に対して回答を出すのが人工知能である。AIチャットは、ひとりの人間が何十年・何百年かかっても覚えきれない情報を蓄積し、質問に対して最適な(かどうかは別にして)答や解を出すのである。チャットGPTを使うと医師国家試験も合格できるという優れものである(日本語版でも、実際の試験問題を解かせたところ、合格ラインには届かなかったものの、55%の正答率だったとの実証報告がある)。

 

これらに対して、世界の中のごく一部の限られた企業が、ほぼ独占的にこれらの情報をWeb上から抽出しているという現状に警鐘を鳴らす人もいる。また、世界の各国が懸念していることに個人情報の問題がある。個人情報を勝手に収集しているのではという懸念である。イタリアはチャットGPTの開発者であるOpen AIに対して改善策を求めており、改善がなされるまでイタリアでの使用を停止した(現在は解除)。

 

 一方、このように身近になってきたAIチャットだが、著作権法とも密接な絡みが出てくる。まずは、AIが学習したWeb上の情報には著作権のあるものが多数ある。日本の場合、それらを読み込んで学習することが直ちに著作権法に違反するとは思えないが、質問に対して学習結果を出力した場合、それが著作権を侵害していないかどうかが問題になることもある。そして、出力したデータは誰が著作権を所有するのかという問題も悩ましい。

 

 それはそれとして、筆者が当面危惧するのは偽情報の氾濫である。各社未完成なまま製品を公開し、自身の製品が世界標準となることを目指しているのであろう。筆者は実際にチャットGPTを使って質問してみた。以下、その報告である。

 

 

 

質問1 滋賀県の観光名所を5か所教えてください

 

回答1

 

滋賀県には多くの観光名所がありますが、以下はその中でも代表的な5つの場所です。

 

1.    びわ湖:日本最大の淡水湖で、周辺には桜や新緑、紅葉といった四季折々の美しい景色が広がっています。湖畔にはレジャー施設や観光スポットがたくさんあります。

 

2.   彦根城:国宝に指定された城で、日本の城の中でも美しいとされています。城内には武具や美術品などが展示されており、歴史に触れることができます。

 

3.   伊吹山:標高1,377mの山で、山頂からは琵琶湖や周辺の景色を一望することができます。また、春には山麓一帯がツツジで覆われ、美しい景色が広がります。

 

4.   永源寺:日本三名園の一つで、紅葉の名所として有名です。広大な敷地には池や庭園があり、自然と美術が融合した景色が楽しめます。

 

5.   近江八幡市街地:江戸時代の町並みが残る街で、歴史的建造物や古い商家がたくさんあります。また、商店街や飲食店も多く、地元の食材を使った料理が楽しめます。

 

筆者評1

 

 概ね正確であるが、伊吹山はツツジが美しいとは聞いたことがない(恐らくツツジはない)、永源寺が日本三名園のひとつ、というのは嬉しいが初耳だ(一般に日本三大名園は後楽園、偕楽園、兼六園を言う)。回答に点数をつければ70点くらいだろうか。

 

 

 

質問2 滋賀県立彦根東高校出身の有名人5人を教えてください

 

回答2                                                   

 

滋賀県立彦根東高校出身の有名人として、以下の5人が挙げられます。

 

1.    浜辺美波:女優。2017年に彦根東高校を卒業後、芸能界入りし、2018年には「響 -HIBIKI-」で映画初主演を果たしました。

 

2.   山内惠介:俳優。彦根東高校在学中にオーディションに合格し、2013年に映画「劇場版 仮面ライダーウィザード in Magic Land」に出演しました。

 

3.   加藤ミリヤ:歌手。彦根東高校在学中に音楽活動を始め、2004年にデビューしました。シングル・アルバム累計売上は100万枚を超えています。

 

4.   友利新:プロ野球選手。彦根東高校を卒業後、中日ドラゴンズに入団し、2018年にはリーグ優勝を経験しました。

 

5.   竹田圭吾:フィギュアスケート選手。彦根東高校在学中にスケートを始め、2015年には全日本フィギュアスケート選手権で3位に入賞しました。現在はプロスケーターとして活躍しています。

 

筆者評2                                                    名前だけでなく内容も含めてまったく出鱈目、つまり偽情報である。0点である。いや、偽情報をあたかも正答のように出力することを考慮すればマイナス100点である。ちなみにWikipediaによると、良く知られている彦根東高校出身の有名人として、田原総一朗(ジャーナリスト)、川端達夫(元衆議院副議長)、夏原平和(平和堂元社長)、山名文和(芸人アキナ)、花田勝彦(陸上競技者)などが掲載されている。前述の偽情報がパソコン画面上にスラスラと表示されるさまは異様かつ不気味というほかない。

ここに記載した以外についてもいくつかの質問を用意してチャットGPTに回答させてみた。例えば、筆者自身が住んでいる某市G地域に関する回答である。ありもしない学校名や駅名、寺社仏閣名がスラスラと表示されてくる。観光地としても知られているとは笑止千万だ。それで言えることは、Web上に情報が行き渡っているメジャーな情報についてはかなり正確な回答を出すことができる。一方、その逆の場合は正答を出せない。出せないどころか、平然とあたかも正答のように偽情報を出してくる。せめて、わからなかったら「わかりません」との回答を出してくれ、と思う。一方、人名について不正確あるいは誤った回答が連発されるのは、AIが個人情報を不当に収集していないため、という見方もあるが、これは筆者には分からない。今後AIが学習を深めることにより精度が上がるかもしれないが、今後AIから出力された偽情報が世界中に蔓延するのは間違いないと筆者は踏んでいる。各個人レベルで真贋を見分ける力(リテラシー)が一層求められる。折角の技術の発展がそのような結末にならなければ良いのだが・・・・・・・。