久々にマッチを擦る

 

自室で香を焚くことがある。20代の頃からの趣味である。かつてはインドや東南アジアの香を焚くことが多かったが、現在はそれに加えて日本の香も焚く。最近は、コーヒーの香りや、スイカの香り、キンモクセイの香り、ラベンダーの香り、ヒノキの香り、ボンタン飴やミルキー、夕張メロン等とのコラボ品など数多くある。選ぶのに困る。

 

 香を焚くときはライターを使う。最近のライターはチャイルドロック構造になっており、高齢者にとっては使いづらい。相当な親指の力を要する。高齢者にとってもライターは危険物(使うな!)ということか。

 

 そのライターのガスが切れたので、何十年ぶりかでマッチを使うことにした。筆者は若い頃からマッチの収集をしていた。主には、喫茶店、飲み屋、食堂・料理屋、旅館・ホテルなどのマッチである。ラベルを見ても今や思い出せない店もあるし、絶対に忘れられない店もある。今ではマッチを置く店舗はほとんどないと言っても過言ではないだろう。ある時家人の知人がやっていた寿司屋が閉店することになり、在庫のマッチを引き取った。25年以上も前の話である。そのマッチの出番である。木の軸、そして、箱の側面の赤燐。こするとポッと赤い火がつく。木が燃える匂い。何とも言えない懐かしさがこみあげてきた。